◆あのビリー・ワイルダーが生涯、敬愛し続けた天才監督エルンスト・ルビッチ
エルンスト・ルビッチ(Ernst Lubitsch:1892年1月28日-1947年11月30日)は、ドイツの映画監督ですが、あの年収1億円を女優として初めて稼いだと言われている“アメリカの恋人”ことメアリー・ピックフォードから招待を受けてハリウッドへ渡米。
以来、世界的人気を博した作品をいくつも生み出した天才中の天才です。
その影響力たるや、有名な映画監督ビリー・ワイルダーが師匠として生涯、尊敬し続けた程でワイルダーの仕事場の壁には「ルビッチならどうした?(How would Lubitsch have done it?)」という言葉が飾られていたそうです。実際にワイルダーはハリウッドでルビッチと一緒に仕事をしており、ルビッチ監督作品の脚本を担当しています。
ただ、この壁にかかっていたとされる言葉なんですが、色々と調べてみると「ルビッチならどうする?(How would Lubitsch do it?)」としている方もいてどちらが本当なのかよくわかりません(^^;まあ、ニュアンスは一緒だからいいけど。
余談ですが三谷幸喜さんはビリー・ワイルダーがまだ存命中にテレビ番組で直接会いに行ってまして、その際に「私ならこうする。ビリー・ワイルダー」と書いてもらい、それを壁に飾っているということです。
ちなみにルビッチの映画については、WOWOWで以前、何作か放送されているようです♪
ワイルダーとルビッチが一緒に仕事をした際には、ルビッチからたくさんのことを教わっていたようです。代表的な作品としては「青髭八人目の妻(Bluebeard’s Eighth Wife)」がルビッチ監督、ワイルダー脚本の有名作品。
この作品はゲイリー・クーパーとクローデット・コルベール主演という夢のようなキャスティングですが、2人が初めて出会う場面をルビッチから注文されたワイルダーが、パジャマの上だけを買いたい男と、パジャマのしただけを買いたい女が偶然デパートで出会うというシナリオを考え採用されたといういいます。
このエピソードについては、実はナンシー・マイヤーズ監督の「ホリデイ」という映画の中で、イーライ・ウォラックという俳優さんがケイト・ウィンスレットに紹介するという場面で引用されたりもしています。
ルビッチに影響された監督はハワード・ホークスなど、まだまだ大勢いますが、日本人でも小津安二郎監督がその1人だったようです。
小津監督はルビッチを尊敬しており「東京の女」という自身の監督した映画の中で「エルンスト・シュワルツ」という架空の作家名が出てきます。これはエルンスト・ルビッチとハンス・シュワルツの名前の文字を組み合わせたものだそうです。
◆「ルビッチ・タッチ」と「ソフィスティケイテッド・コメディの天才」
ちなみに、ルビッチは最初ドイツでは舞台俳優として有名喜劇俳優に弟子入りして、いくつかの舞台に立っていたようです。
監督としては、登場人物の目線や立ち位置などで感情を表現するという「ルビッチ・タッチ」を確立したほか、「ソフィスティケイテッド・コメディの天才」などと称されていたようです。
ソフィスティケイテッド(sophisticated)というのは都会風に洗練されているという意味だと思いますが、僕個人的には洗練されているというよりは、ルビッチ作品には共通して「芸術至上主義的なカッコ良さ」があるという印象を受けます。登場人物の生き様がカッコ良いんですよね~♪
◆エルンスト・ルビッチの代表作およびオススメ作
代表作には「街角 桃色の店」「天国は待ってくれる」「生活の設計」「ニノチカ」「青髭八人目の妻」「結婚哲学」「極楽特急」など多数あります。
中でもジェームズ・スチュワート主演の「街角 桃色の店 (The Shop Around the Corner)」は、トム・ハンクス&メグ・ライアン主演の「ユー・ガット・メール」としてリメイクされているので有名かもしれませんね。個人的にも「街角 桃色の店」はルビッチ作品の中でもNo.1に好きかもしれません。
あとは「生活の設計 (Design for Living)」は、三谷幸喜さんのドラマで石橋貴明さん、飯島直子さん、西村雅彦さんが出演した「今夜、宇宙の片隅で」というドラマの中で紹介されていたと記憶しています。たしか(笑)というか、ほとんど「生活の設計」のリメイクといってもいいくらいですよね♪「生活の設計」は先程述べた芸術至上主義の色が濃い作品ですので、好きな人は大好きなんじゃないかなヽ(´▽`)/
「天国は待ってくれる」もかなりオススメの傑作です。
これは1943年製作とルビッチのかなり後期の作品ということもあってか、どこかルビッチの自伝的な半生記を振り返っているような感じもして、まさにルビッチ集大成的な作品という印象を受けました。
最高に泣けて、温かい気持ちになれる感動作品なので、こちらも僕の大好きな映画の1本です!
ルビッチを初めて観るという方は、まず上記3作品「街角 桃色の店」「天国は待ってくれる」「生活の設計」あたりを見てみるといいかもしれません。もちろん他の作品も最高なんですけどね☆
そうそう、以前スカパー!でもルビッチ特集をやっていたようですよ☆
そして、フランク・キャプラやチャップリン作品のように、人間愛にあふれてり、人生を100%謳歌しようとしている人間の情熱やひたむきさに触れることができ、生きる希望をもらえます。まさに勇気をくれる映画、エールをくれる、元気をくれる映画の宝庫といえるでしょう。
◆エルンスト・ルビッチ監督の作品年表と人生年表☆
「出世靴屋」 (1916)
「カルメン」 (1918)
「男になったら」 (1918)
「舞踏の花形」 (1918)
「呪の眼」 (1918)
「パッション」 (1919)
「花聟探し」 (1919)
「花嫁人形」 (1919)
「牡蠣の王女」 (1919)
「デセプション」 (1920)
「寵姫ズムルン」 (1920)
「田舎ロメオとジュリエット」(1920)
「白黒姉妹」 (1920)
「山猫リュシュカ」 (1921)
「ファラオの恋」 (1922)
「灼熱の情炎」 (1922)
「ロジタ」 (1923)
「結婚哲学」 (1924)
「禁断の楽園」 (1924)
「三人の女性」 (1924)
「ウィンダミア夫人の扇」(1925)
「当世女大学」 (1925)
「陽気な巴里っ子」 (1926)
「思ひ出」 (1927)
「ラヴ・パレイド」 (1929)
「山の王者」 (1929)
「パラマウント・オン・パレイド」(1930)
「モンテ・カルロ」 (1930)
「陽気な中尉さん」 (1931)
「私の殺した男」 (1932)
「極楽特急」 (1932)
「百萬圓貰ったら」 (1932)
「君とひととき」 (1932)
「生活の設計」 (1933)
「メリィ・ウィドウ」 (1934)
「真珠の頚飾」 (1936)
「天使」 (1937)
「青髭八人目の妻」 (1938)
「ニノチカ」 (1939)
「桃色(ピンク)の店」(1940)
「淑女超特急」 (1941)
「生きるべきか死ぬべきか」(1942)
「天国は待ってくれる」 (1943)
「ロイヤル・スキャンダル」(1945)
「小間使」 (1946)
「あのアーミン毛皮の貴婦人」(1948)
作品年表については、もうひとつ、なんとエルンスト・ルビッチ監督が活躍した時期は偶然にもチャップリンとフランク・キャプラとビリー・ワイルダー監督という僕の大好きな、というか映画史上最も偉大な4人の天才が同時期に活躍したというすごい時期なんですね。
そういう意味でルビッチ監督だけでなく、チャップリン、フランク・キャプラ、ワイルダーも合わせた4人の代表作品年表も作成しましたので興味のある方はぜひ参考に見てみて下さい。
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